咬み合わせを守る治療や痛みのないインプラント手術
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顎関節症とは

顎関節症の多くの患者さんには何らかの咬み合せの異常が見られます。
しかし患者さん自身は咬み合わせの異常を自覚できない事が多いのです。
咬み合わせの異常が関節頭の位置の異常を起こし、関節に関連する筋肉やじん帯のバランスを崩し、色々の痛みや不快症状を引き起こします。
関節頭の移動により下顎全体の位置の異常が起きます。
ほとんどの場合は咬み合わせが低くなり、関節頭が後ろに移動します。
細い首の骨に支えられた大きく重い頭蓋骨の中で、下顎骨の安定した位置が微妙に変化する事で、下顎骨を取り巻く筋肉だけでなく、頭骸骨を正常に保っている筋肉までもが異常な緊張を示し、その位置の異常に順応しようとし、その結果様々な症状として現れてきます。

症状としては、
・関節痛首の後方の筋肉の痛み
・頭痛
・口が開かない
・関節の異常音
・肩こり
・手の痺れ
・腰の痛み
・生理不順
・偏頭痛
等が起こります。

顎関節症の治療

今現れている痛み不快症状の除去し、咬み合わせを狂わせている原因を特定し取り除きます。
顎関節症を起こさないよう、正しい下顎の位置で咬み合わせを作っていきます。

具体的に治療法を説明します。
口腔内口腔外の審査を行い痛みの部位痛みの強さを調べます。
診断および疼痛不快症状の軽減の目的でミニスプリントと呼ばれる1センチ角のレジンブロックを第一小臼歯に入れ、食事会話以外は外さないでもらいます。
スプリントを入れてそこで咬み合わせた瞬間から痛みが消えるか、軽減する方がほとんどです。
ミニスプリントを入れる事により、痛みが楽になれば咬み合わせ起因する顎関節症であると診断出来ます。
短い方では1週間、長くなれば治療として数週間以上スプリントを入れてもらいます。
後は原因を見つけ出し正しいか咬み合わせの位置を作っていきます。
原因が明らかな場合はスプリントを入れずに咬み合わせの調整だけで終わる場合や、左右に顎を動かしたとき障害になる部分を削るだけで治る場合もあります。
また状況によっては、全体的に冠を作り直さなければならない場合や、入れ歯を作り直さなければならない事もあります。
インプラントを植えてしっかり咬める場所を作らなければ治らない場合もありますが、ほとんどの場合は奥歯の咬み合わせを高くして、前方に下顎を移動させたところが安定した咬合位となります。
要は顎の関節が安定してストレスのない場所を見つけ出して、物を咬める場所を作らねばならないのです。
治った後も顎関節症は再発しやすい病気でもある為、予防歯科的な考えを持ち6ヶ月毎の定期検査を行い、再発に備えなければならないと考えています。

※顎関節治療の実際

右の顎関節痛で口が開かない、右のこめかみあたりの筋肉が痛むなどの症状で来院されました。
向かって左側、右の第一小臼歯部にミニスプリントを装着したところ、装着直後痛みは軽減し口も開くようになりました。
1週後には症状は消えまいしたが、根本的な原因としては歯並びの悪さが考えられましたので、矯正専門医を紹介し受診を勧めました。

①第一小臼歯部にミニスプリントを作り下の歯が一点でぶつかるようにします。
②原因としては歯並びの悪さが考えられましたので、矯正専門医を紹介し受診を勧めました。

③ミニスプリントの表
④ミニスプリントの裏

以前に矯正治療の経験のある患者さんで右の顎関節症の症状で来院されました。
最初は右にミニスプリントを作りましたが症状は改善せず、1週後左にもミニスプリントを作ったところ、これにより症状は改善しました。
原因としては奥歯のかみ合わせが考えられ、かみ合わせの調整のみで治す事が出来ました。

①最初は右にミニスプリントを作ったが、症状は改善しなかった為、1週後左にもミニスプリントを作り症状は改善しました。
②原因としては奥歯のかみ合わせが考えられ、かみ合わせの調整のみで治すことができました。

初診時に奥歯がぐらぐらの状態で物が噛めないという訴えで来院されました。
抜歯や歯槽膿漏の治療後、インプラントを植えてかみ合わせを安定させました。
顎関節の痛みや筋肉痛・関節の音(クリック音)等の顎関節症状がありましたが、仮の歯を作り症状の出ないところで安定させました。
仮の歯の状態で3カ月おき症状の安定を確かめ最終的なクラウンを作り、インプラントを植えて奥歯のかみ合わせを安定させると、多くの方に体調の回復がみられます。
かみ合わせの不安定さにより顎関節に痛みはなくても、体のあちこちにひずみがあらわれ体調不良が現われたと考えています。
かみ合わせを安定させる事により、顎関節が正常の位置にもどり体調が回復したと考えられます。
治療後2年間、顎関節症の再発はありません。

①初診時には奥歯でしっかり噛めるところが2か所しかありませんでしたので、抜歯する歯を決めました。
②抜歯を行い、早めにインプラントを植えて仮歯を作りかみ合わせを安定させていきます。

③最終的に4本のインプラントを植えた状態です。(1年後のレントゲン写真)
④治療終了2年後の検診時の状態です。全体の骨は安定しています。

⑤治療終了2年後の上の歯の状態です。向かって左上の部分に2本のインプラントクラウンが植えてあります。
②治療終了2年後の下の歯の状態です。向かって右下に2本のインプラントクラウンが植えてあります。かみ合わせも安定し顎関節に異常は見られません。

左右両側の顎関節症で来院されました。
症状は左右のクリック音、口を大きく開けられない、こめかみの強いこわばりと首の後ろの痛み、肩や背中の痛みでした。
半年近くかけて治療を行いましたので、治療経過を写真で説明します。
両側にミニスプリントを入れてかみ合わせを挙上させ、顎の安定と症状の緩和を図りました。
スプリントの調整を繰り返し下顎が奥に引っ込み(下顎骨の後退)と噛み合わせが低い(咬合の低下)が原因ではないかと考え、下顎が前方に来ている状態ですとほぼ色々な不快症状も消えました。

①初診時の咬合状態です。この状態から開口するとかなり大きなクリック音が聴き取れます。
②ミニスプリントを入れてかみ合わせを挙上させると、顎は安定し症状は緩和されました。

③スプリントを入れた状態です。
④スプリントを外した症状のない咬合状態です。前歯部だけが当たってしまい奥歯同士はかなり隙間が開いてしまいます。

⑤奥歯同士がかなり開いているのが写真からも分かると思います。
⑥機械の上でかみ合わせを診る為に上下の顎模型を作り咬合を再現するための処置を行います。これはかみ合わせを機械の上に再現する為の操作です。

⑦咬合器というかみ合わせを再現する機械の上に模型をつけて診断及びこれからの治療のやり方を見つけ出します。
⑧模型上でも下顎が前方に移動し前歯部だけに当たりが出て、臼歯ではかなり隙間ができてしまいます。

⑨模型上で模型を削りどこまで前歯を削れるかを検討し、どれ位かみ合わせを高くするかを決定します。
⑩上の奥歯全体にスプリントを作り、接着性のセメントで取れない状態にして食事の時も使うようにしました。

この状態は顎が安定し痛みなく使える状態なるまで4カ月程度かかりました。
初診時の状態よりも顎がかなり前に来て噛み合わせが高くなったのが分かると思います。
上下の前歯の中心がほぼ一致して左右の中心もあっていることがわかります。
この状態で1カ月以上使ってもらい、状態の変化がないか見守りました。
1カ月を経過し問題のないことがわかりましたので、スプリントを外し再び全体の型を取り奥歯の最終の金属のスプリントを作りました。

⑪奥歯のかみ合わせ部分を覆う合成樹脂で作った薄いブロック状のものです。
⑫顎がかなり前に来て噛み合わせが高くなったので、スプリントを外し再び全体の型を取り奥歯の最終の金属のスプリントを作りました。

⑬上顎のメタルスプリントです。
⑭下顎のメタルスプリントです。

⑮歯に接着性のセメントで取れないようにつけますが、力を加えれば外す事は出来るものです。スプリントの裏側の状態です。
⑯上顎のスプリントをつけた状態です。

⑰下顎のスプリントをつけた状態です。
⑱上下のスプリントをつけ咬合した状態です。臨床症状は消え快適という事ですが、再発も十分に考えられ十分な注意が必要と思っています。定期検査には必ず来ますということで終了しました。

顎関節症を起こさせない普段の心がけ

我々歯科医師が最も気をつけなければいけないのは我々が顎関節症を作る恐れがあるという点です。
インレークラウン、義歯の製作、矯正治療、これらが咬合のずれや低下を招いてしまう事があるからです。
治療後すぐに症状は現れませんが、時間が経過してから顎関節症を発症してしまいます。
咬み合わせの取り方・咬み合わせの調整・仮り歯の作り方など、色々な事に細心の注意を払わないと、我々が病気の一因という事になってしまいます。
どんなに素晴らしいインプラントを植えても、どんなに綺麗な歯を入れても、咬み合わせを考えなければ命が吹き込まれません。

私が診療の中で顎関節症を作らないように注意している事は、まず初診時に顎の状態を診査しておく事です。

症状の有無にかかわらず、関節の動き関節の音筋肉の圧痛の有無顎の動きこれらを知っておけば、治療を進める場合に大きな参考になります。
奥歯の治療を進める場合、仮の歯を必ず作っておくようにしています。

適正な高さの仮り歯がないと咬合の低下を招き、下顎骨の移動がおきてしまい、顎関節症を起こしてしまう恐れがあります。
奥歯の咬み合わせを採る時や咬み合わせの調整をする時など、体を起こした状態で行います。
診療台の上で仰向けに寝る状態で行うと、顎が後方に下がり咬み合わせが低く出来てしまう場合が多いのです。
最終のクラウンやブリッジを入れる場合、1週以上仮につけて咬み合わせに変化が起きないか経過を見てから最終的につけるようにしています。
これらの事が診療の中で当たり前の事として行う事が重要なのです。

長い時間をかけて顎関節症を進行させてしまった場合すぐに治る事はまれですので、時間をかけて直さなければならない事も知っておいて下さい。
余談ですが、今まで何百人もの顎関節症の治療してきた中で、不思議な経験もしてまいりました。

2人の方にスプリントを入れ治療が始まりましたところ、耳がよく聞こえなかったのに顎の状態が良くなるにつれ、よく聞こえるように成ってきたというのを聞いた時です。
顎関節症の治療をして難聴が改善するなんて読んだ事も聞いた事もなかったのですが、よく考えてみると顎関節の位置は内耳と隣り合わせており、顎関節の改善が聴覚によい影響を与えたと思われます。
そのときの患者さんの喜ぶ顔が今でも忘れられません。

顎関節症に関するQ&A
  • Q.ミニスプリントを入れるとなぜ痛みが取れたり楽になったりするのですか?
  • A.顎関節症を起こしていた咬み合わせを1次遮断します。
    奥歯での咬みしめが消え、顎が前方に変位し、自然に顎の最も楽なポジションをとるように脳が命じます。
    すると緊張していた筋肉が弛緩し、痛みが取れ関連したすべての筋肉靭帯がリラックスした状態となります。
  • Q.ミニスプリントは保険で作れるのですか ?
  • A.顎関節の治療は健康保険の中でまかなう事が出来ます。
    クラウンや義歯も保険で作る事が出来ますが、クラウンや義歯を作るもののなかには保険の適用しないものもあります。
    どうしてもインプラントを植えないと咬み合わせの安定しないものもあり、費用がかかる事があります。
  • Q.口を開くときに顎の音が気になります。
    どうしてですか?そして治りますか?
  • A.正常には関節は動く時に関節円板と呼ぶ軟骨の上で滑らかに回転して口の開閉を行います。
    しかし閉じている時軟骨から外れていて、開く時に軟骨の上にのるとその時にコキィと音がします。
    また閉じてくる時に音が出る事もあります。
    外に聞こえるような大きな音の場合と自分にしか聞こえない音の場合があります。
    専門用語ではクリック音と呼びます。
    関節円板の上で開閉するようにすれば音は消えます。
    簡単に治る場合と咬み合わせを変えたりしないと治らない場合があります。
  • Q.歯科医院ですべての顎関節症は治るのですか?
  • A.咬み合わせに起因しているものは治るものも多いと思っております。
    しかし何をやっても治らないものもあります。
    鍵が掛かったような状態でお手上げになるのもあります。
    関節そのものに器質的な変化(じん帯の骨化や関節頭の変化)が現れたり、ストレスにさらされくいしばりがなくならないなどの場合は難しいと考えています。
  • Q.ミニスプリントは1日中入れておくのですか?
  • A.食事の時や歯を磨く時、話をする時に邪魔な場合以外は出来るだけ入れて頂きます。
    全部の歯を覆うスプリントでない分、入れておいてもそれほど違和感を持たずに済むはずです。